ギリシャが風邪をひくと中国も風邪をひく

ギリシャより中国経済の失速のほうが世界経済へのダメージは大きい

円債市場は、膠着感の強い相場展開のなかで年度上半期を終えた。この半期を通してみれば、10年債で3月末の1.25%近辺から9月途中に一時0.9%台まで低下したということで、一貫して緩やかな金利低下トレンドのなかにあったと総括できるだろう。米債10年金利か3月末の3.5%の水準から9月には一時1.7%割れまで低下した劇変との対比では、特に7月以降の円債市場の金利低下の感応度は鈍かった。7月以降、世界的に株価が急落し、米国および欧州主要国の長期金利が劇的な低下を見せた背景は、①ギリシャ問題など欧州債務問題への懸念②欧米で財政緊縮方向が明になるなかで米国の景気指標が急落したこと③中国など新興国で景気減速傾向が強まったこと、の3点である。

 

しかし、3つの要因のうち、最も市場が懸念したと思われるギリシャ問題に関しては、短期的なデフォルトはないと見られることに加え、第2次支援の前提となるEFSF(欧州金融安定基金)の機能拡充も実現する方向にある。2~3年スパンでの長期的な懸念は残しつつも、とりあえず2012年以降のギリシャの資金繰りに一定の目処がっくことにはなりそうだ。そういった展開を受けて、今後一旦は市場に楽観ムードが広がる可能性がある。問題は、仮に欧州債務問題が一旦沈静化の方向に動いたとしても、上記3つの要因のうち、米国経済と新興国経済の問題が残ることである。そして、当然、この2つの要因は密接に関連しつつ、今後1~2四半期は世界的に長期金利に低下圧力を加え続けると見られる。

 

とくに焦点は中国経済である。現在、減速基調にある中国経済は、2008年のように急失速する兆しは見られないものの、2009年初めや2010年半ばのようなV字型回復を果たすことも難しそうである。世界景気の牽引車とも言える中国経済が、失速もないがV字型回復もないという「なべ底」の経路を辿れば、当然、米国や日本など先進国経済も同様のパスを辿る公算が大きくなる。

ユーロの利下げについて

注目のECBで予想外に25Bpの利下げが行われ、ドラギ・ECB新総裁は会見で継続的な利下げの可能性を示唆したために、ユーロは再び下落する展開となった。この動きにその他の主要通貨やクロス円通貨も下落で反応したが、再びギリシャの国民投票回避の材料でユーロが急反発すると、その他の通貨もこれに倣って値を戻す動きとなった。 更に、上下を繰り返していた米国株式市場が上昇傾向を強め始めた事も市場の安心感に繋がったと考えられ、各通貨とも底堅い値動きを続けながらこの日の取引を終えている。