ユーロ、ドル、円の見通し

米ドル、円ともに買い戻し

7月以降、グローバル経済の停滞、欧州情勢の悪化を受けた世界の投資家のリスク回避志向の高まりが顕著である。こうした状況は、第4四半期も続くか、あるいはその状態が悪化する可能性が高いと考え警戒している。 J.P.モルガンはユーロ圏の経済成長率が今四半期以降、3四半期連続でマイナスとなり、リセッションに陥ると予想している。米国経済がリセッション入りする可能性も低くはない。欧州財政問題に関して、欧州各国政府が乗り越えなければならない課題は山積みであり、世界の投資家や企業がリスクテイクに対して消極的になる状態が続くであろう。

 

こうした環境下では、米ドルと円の双方が買い戻され、結果的にクロス円か大きく下落することとなる。今とは逆にグローバル経済が好調で、世界の投資家のリスクテイク嗜好が強い時には、高金利国やコモディティ産出国、新興国などに投資が大量に流れ込む。その際、そうした投資資金の出し手は資金を大量に持つ日本や米国の投資家や企業である。日本も米国も金融資本市場が大きいため、他国の投資家や企業が新興国などに投資を行う際、円や米ドルで資金調達を行うことも多いであろう。従って、グローバル経済が好調な時には円や米ドルが売られ、逆に経済が停滞し、投資家のリスク回避志向が高まると円も米ドルも買い戻されるのである。この結果、米ドル円相場の動きは限定的となるが、クロス円の下落が大きくなる。

1ユーロ=90円台の可能性も

日本は世界最大の純債権国である。例えば、今後ユーロ圈の情勢が一段と悪化家や企業が資金を引きあげることを予想するのはそれほど難しくはないであろう。この時、ユーロ圏から引きあげる資金の多くが、世界最大の純債権国である日本の投資家や企業の資金であっても驚きではない。同じ様に考えれば、本邦個人投資家に人気の豪ドル、ブラジル・レアル、南アフリカ・ランドといった高金利通貨国から資金が引きあげられる時、最も多額の資金を引きあげるのが日本人であることも容易に想像がっく。豪ドル円、ブラジル・レアル円、南ア・ランド円などのクロス円でも一段の円高進行が警戒される。

 

円の実質実効為替レートは現状、1970年以降の平均レベルから6〜7%程度割高になっているだけである。これは、対米ドルで円は相当程度割高になっているものの、クロス円ではさほど円高になっていないことが背景にあると考えられる。このことは今後投資家のリスク回避志向が一段と強まった時、クロス円の下げ余地が大きいことを示唆していると言える。チャートはユーロ円相場(1999年以前は各欧州通貨の相場から算出)と購買力平価(PPP)の推移を示している。通常、購買力平価は水準をそのまま使うことはできず、傾きだけが参考になるが、生産者物価(日本は国内企業物価)指数を用いた1985年基準の購買力平価は、たまたま過去のユーロ円相場の上下動のほぼ中心となっているのでそのまま利用した。

 

データが利用可能な1985年以降、欧州の物価上昇率は年平均2.3%程度日本の物価上昇率より高くなっている。従って、ユーロ円相場の均衡レートは毎年2.3%づつ高い方向にシフトしていると考えられる。ユーロ円相場の最安値は2000年10月の88円台である。年平均2.3%の物価上昇率の差を勘案すると、当時の88円台と同レベルの水準は現時点では80円程度となる。ユーロ円相場の均衡レベルは恐らくno円前後と考えられるが、11年前に88円まで円高方向にオーバーシュートしたことを考えると、ユーロ円の下値余地はかなり大きいと言うことができ、年末までに95円程度まで下落するリスクは小さくない。

 

ドル円はドルも円も強くなるため、大きな動きとはならないであろう。ただ、世界最大の経常赤字国・純債務国であるアメリカのドルと、世界第2位の経常黒字国・世界最大の純債権国である日本の円との間の金利差が、3ヵ月物で10〜20bp(ベーシスポイント)、10年物で100bp前後となっている状況でドル円相場が本格的に上昇すると予想するのは困難である。 ドル/円はクロス円ほど急速ではないにしろ、ジリジリと下落する展開が続くであろう。

ユーロの利下げについて

注目のECBで予想外に25Bpの利下げが行われ、ドラギ・ECB新総裁は会見で継続的な利下げの可能性を示唆したために、ユーロは再び下落する展開となった。この動きにその他の主要通貨やクロス円通貨も下落で反応したが、再びギリシャの国民投票回避の材料でユーロが急反発すると、その他の通貨もこれに倣って値を戻す動きとなった。 更に、上下を繰り返していた米国株式市場が上昇傾向を強め始めた事も市場の安心感に繋がったと考えられ、各通貨とも底堅い値動きを続けながらこの日の取引を終えている。